SNSを利用して情報収集することは当たり前となり、若年層はもちろん、それ以外の世代にとってもSNSは欠かせないものとなりつつあります。 企業にとっては、自社のSNSアカウントを使って商品やサービスについての投稿だけでなく、商品やサービスをお金をかけて宣伝するSNS広告の重要度も増していると言えるでしょう。

本記事では、SNS広告とは何か、他の広告との違いやメリット、SNS広告の種類や費用について解説していきます。

SNS広告とは

SNS広告とは、LINEやInstagram、TikTokなどのソーシャルメディアプラットフォーム上で配信される広告のことです。ユーザーの興味関心や行動履歴、デモグラフィック情報(年齢・性別等)、ジオグラフィック情報(所在地)に基づいて配信されるためターゲティング精度が高く、特定のユーザー層に効果的にリーチすることができます

SNS広告はブランド認知度の向上、新規顧客の獲得、エンゲージメントの促進など、多様なマーケティング目標を達成するために重要なツールです。

ディスプレイ広告(画像広告)との違い

Google広告やYahoo!広告をはじめとしたディスプレイ広告は、主にウェブサイト上に表示される画像広告を指し、ユーザーの閲覧行動や属性データに基づいて配信されます。
※SNS広告も広義にはディスプレイ広告と称されることが多いです。

ディスプレイ広告は、GoogleやYahoo!のサービス内だけでなく、連携する外部サイトやアプリにおいても広告配信がされる(第三者の運営するサイトやアプリに幅広く配信される可能性がある)という点で、対象プラットフォーム内でのみ配信されるSNS広告とは大きく異なります。

Web広告のターゲティングの方法はSNS広告と似た側面もありますが、SNSの方がアカウントに紐づいた詳細な情報を蓄えているため、一般的にSNS広告の方が精度の高いターゲティングが可能であると言われています。

リスティング広告との違い

リスティング広告は検索エンジンの検索結果ページに表示される広告で、ユーザーが特定のキーワードを検索した際に表示されます。

商品やサービスについて具体的なニーズを持つユーザー(顕在層)にリーチするのに適しています。 これに対し、SNS広告はユーザーのソーシャルメディア上の活動や興味関心に基づいて表示されるため、検索行動に依存しません

SNS広告はまだ具体的なニーズが形成されていないユーザー(潜在層)にリーチすることが得意であり、リスティング広告は具体的なニーズを持つユーザー(顕在層)にリーチすることが得意という点で大きく異なります。

SNS運用との違い

SNS広告とSNS運用は両者ともSNSマーケティングの戦略の手段です。

SNS運用は企業やブランド、または社員が自社のSNSアカウントを管理し、定期的にコンテンツを投稿することをいいます。フォロワーとの継続的なコミュニケーションを通じてエンゲージメントを高め、企業やブランドのファンを育成したり認知拡大を図ったりすることが目的です。

一方で、SNS広告は、有料で特定のユーザー層に対して短期間で効果的にメッセージを届ける手段です。 SNS運用とSNS広告を戦略的に組み合わせることで、より高いマーケティング効果を得ることができます。

SNS広告のメリット

SNS広告を配信するメリットは主に3つあります。以下で詳しく紹介していきます。

  • ターゲティングの精度が高い
  • 潜在顧客にリーチできる
  • 少額から始められる

ターゲティングの精度が高い

SNS広告は、ターゲティングの精度の高さが売りの1つです。

SNSプラットフォームは、ユーザーの興味関心、行動履歴、年齢や性別、学歴、職業などのデモグラフィック情報を豊富に持っており、これらのデータを活用して精度の高いターゲティングを可能にしています。

近年はプラットフォーム側の機械学習機能も強化されつつあり、ユーザーの趣味趣向は自動的に見抜いて広告配信しやすくなっており、かつてより無駄な広告費を削減しやすくなっています

拡散性がある

SNSは拡散力が高く、ユーザーが広告をシェアすることで、広告が自動的に広がっていく可能性があります。ユーザーの意思で広告が拡散される場合、追加の広告費はかかりません

拡散性の高い広告コンテンツを発信することは、ユーザーにかなりの好印象を与える必要があるため容易ではありません。ですが、もし印象的な広告クリエイティブを配信できれば、ユーザーが勝手に拡散していくことで費用対効果を高めることができます。これも他の広告媒体とは大きく異なる点の1つです。

少額から始められる

SNS広告は、少額から始められる点も魅力の一つです。

予算が限られている中小企業やスタートアップでも、手軽に広告を始めることができます。 また、上述したように、SNS広告はユーザーによるシェアやコメントなどを通じて自然に拡散されるため、2次拡散以降の費用がかからないというメリットもあります。

初期費用を抑えつつ、広告の効果を確認したい場合にSNS広告はおすすめです。

SNS広告の活用パターン

SNS広告の活用パターンにはいくつかあります。以下に4つの活用パターンを紹介していきます。

  • 潜在層へ商品やサービスの認知拡大
  • SNSアカウントのフォロワー獲得
  • WebサイトやECサイトへの誘導、購買促進
  • SNSキャンペーンとの連動

潜在層へ商品やサービスの認知拡大

SNS広告は、潜在顧客への認知拡大に非常に効果的です。

ターゲティング精度が高いため、特定の興味や関心を持つユーザーに対して広告を表示できます。 例えば、新製品や新サービスの紹介において、まだブランドを知らないユーザー層にリーチし、関心を引くことが可能です。

さらに、SNSの拡散力を利用してユーザーが広告をシェアすることで、より広範囲にブランドメッセージを伝えることができるため、自然な形でブランドの認知度を高めることができるでしょう。

SNSアカウントのフォロワー獲得

SNS広告は、SNSアカウントのフォロワー獲得にも効果的です。

フォロワーを増やすことで、将来的なマーケティング活動の基盤を築くことができます。広告を通じて魅力的なコンテンツやキャンペーンを紹介し、ユーザーにフォローを促すことで、ブランドの存在感を強化できます。

また、フォロワーが増えることでオーガニックリーチも拡大し、将来的に広告費用を抑えながら効果的なマーケティング活動も展開することが可能です。フォロワーの増加は、ユーザーエンゲージメントの増加や売上の向上にも大きな影響を与えます。

WebサイトやECサイトへの誘導、購買促進

WebサイトやECサイトへの誘導、購買促進はSNS広告の大きな役割の1つです。

広告にリンクを含め、興味を持ったユーザーを直接販売ページに誘導していきます。特定の商品やサービスの魅力を強調した広告を展開することで、購入意欲を高めることを狙います。

リターゲティング広告(一度Webサイトを訪問したことのあるユーザーに再訪を促す配信)を活用することで潜在顧客に再アプローチし、購買を促進することも可能です。

SNSキャンペーンとの連動

SNS広告は、SNSキャンペーンと連動させることで、より大きな効果を生み出します

例えば、特定のハッシュタグを用いたキャンペーンを実施し、それを広告として配信することで、より多くのユーザーにキャンペーンを知ってもらうことが可能です。 キャンペーンへの参加を促進し、エンゲージメントを高めることができます。

キャンペーンの結果を分析し、次の広告戦略に反映させることで、継続的なマーケティングの改善にもつなげることが可能になります。

各SNSの広告の種類と費用

ここからは6つの代表的なSNSの特徴や広告の種類、費用について解説していきます。

  • LINE
  • Instagram
  • TikTok
  • X(旧Twitter)
  • YouTube
  • Facebook

LINE

LINEは9,700万人以上のユーザーを誇るプラットフォームであり、幅広い年齢層の人に利用されています。

日本で最も普及しているメッセージアプリで、日常的に使用しているアクティブユーザーが多いため、幅広い年代に商品やサービスについての情報を届けやすいです。

広告の種類

LINE広告は、トークリストの上部やLINE NEWS、LINE VOOMなどに掲載することが可能です。LINE広告のフォーマットは画像や動画、カルーセル、アニメーションがあります。

広告の費用

LINE広告の主な課金形態とかかるおよその費用は以下の表の通りです。

  • CPM(インプレッション課金) :1,000回表示につき100〜1,200円
  • CPC(クリック課金) :1クリック24〜200円
  • CPF(友だち追加課金) :友達追加1人あたり50〜75円

Instagram

Instagramは画像や動画をメインとしたビジュアル重視のSNSで、特に10~20代の若年層に人気です。費用対効果を高めるためには、テキストメインの広告ではなく画像や動画を駆使した効果的な配信が欠かせません。

広告の種類

Instagram広告は、フィード広告、ストーリーズ広告、リール広告、発見タブ広告などに掲載することが可能です。画像、動画、カルーセルなど多様なクリエイティブを使用できます。

広告の費用

  • CPM(インプレッション課金):1,000回表示につき500〜1,000円
  • CPC(クリック課金):1クリック100〜200円
  • CPV(再生数課金):1再生あたり4〜8円

TikTok

TikTokは10代のユーザーが最も多く、Instagramよりも更に若年層へのリーチができます。短い動画を中心としたSNSで、画像や動画だけでなく、音楽やダンスを組み合わせたクリエイティブなコンテンツが特徴です。ユーザー生成コンテンツ(UGC)によって拡散されることもあります。

広告の種類

TikTok広告は、アプリを起動したときに表示される起動画面広告、通常の投稿と投稿の間に表示されるインフィード広告、ハッシュタグを設定し、ハッシュタグにちなんだ動画投稿を促すハッシュタグチャレンジ広告があります。フォーマットは画像と動画の2種類です。

広告の費用

  • CPM(インプレッション課金):1,000回表示につき100〜1,000円
  • CPC(クリック課金):1クリック30〜200円
  • CPV(再生数課金): 1再生あたり5〜60円

X(旧Twitter)

X(旧Twitter)はリアルタイムの情報共有が特徴のSNSで、特にニュースやトレンドの拡散に強みがあります。テキストベースの投稿が中心で、短時間で多くの情報を発信・受信できるのが特徴です。

広告の種類

X広告は、タイムライン上に表示できるプロモ広告、フォロワー獲得ができるフォロワー獲得広告、タイムライン上や話題を検索タブの上部に表示できるXテイクオーバーなどがあります。 広告フォーマットは画像や動画、カルーセルだけでなく、テキストを使って広告を作成が可能です。

広告の費用

  • CPM(インプレッション課金):1,000回表示につき400〜650円
  • CPC(クリック課金):1クリック24〜200円
  • CPV(再生数課金):1再生あたり5〜20円

YouTube

YouTubeは動画共有プラットフォームで、幅広い年齢層に利用されています。エンターテインメントから教育、ニュースまで、多種多様なコンテンツが存在し、長編動画も視聴されています。

広告の種類

YouTube広告は、5秒後にスキップできるスキッパブル広告と、6秒または15秒スキップできないノンスキッパブル広告があります。他に関連動画に混ざって配信されるインフィード広告や、ホーム画面上部に表示されるマストヘッド広告なども配信できます。 動画の前後や再生途中、ホーム画面上部、関連動画欄に広告が掲載されます。広告フォーマットは動画がメインです。

広告の費用

  • CPM(インプレッション課金):1,000回表示につき500〜800円
  • CPC(クリック課金):1クリック50〜150円
  • CPV(再生数課金):1再生あたり2~30円
    ※30秒間視聴or30秒経過前に広告をクリック

Facebook

Facebookは実名登録をとするSNSで、広範なデモグラフィックデータを活用した精密なターゲティングが可能です。10代~20代のユーザーは少なく、30代以降のユーザーが多いです。特にビジネス関連のコミュニケーションや、家族・友人との交流に利用されています。

広告の種類

Facebook広告は、フィード広告やストーリーズ広告、検索結果が表示される前に配信される検索結果広告などがあります。広告フォーマットとしては、画像や動画、カルーセルだけでなく、スライドショー広告などがあります。

広告の費用

  • CPM(インプレッション課金):1,000回表示につき1,000円~6,000円
  • CPC(クリック課金):1クリック100〜300円

SNS広告で効果的な運用するためのポイント

SNS広告を効果的に運用するためのポイントを以下に5つ紹介していきます。

  • 目的を明確にする
  • 細かいターゲティングをする
  • SNSライクなクリエイティブを作る
  • 広告を常に最適化する
  • 効果測定と改善をする

目的を明確にする

SNS広告を効果的に運用するためには、まず広告の目的を明確にすることが重要です。

目的が明確でなければ、効果的な戦略を立てることができず、広告費用の無駄遣いにつながります。 例えば、新製品の認知度を高める、Webサイトへのアクセス数を増やす、特定のアクション(購入、登録など)を促すなど、具体的な目標を設定します。明確な目的を持つことで、広告の内容やターゲティング、評価基準を一貫して運用することが可能です。

細かいターゲティングをする

SNS広告の強みの一つは、詳細なターゲティングが可能であることです。

年齢、性別、地域、興味関心、行動履歴など、さまざまなデータを活用して特定のユーザー層に対して広告を配信することが可能です。広告が無関係なユーザーに表示されることを防ぎ、広告の効果を最大化できるでしょう。

例えば、ファッションブランドであれば、特定のスタイルやブランドに興味を持つユーザーに対して広告を配信することで、より高いエンゲージメントとコンバージョンを期待できます。

SNSライクなクリエイティブを作る

SNS広告では、広告であることが目立つと、ユーザーはすぐにスキップしてしまいます。

そのため、SNS特有のトーンやスタイルを取り入れ、ユーザーの投稿欄に自然に溶け込むような、関心を持ちやすいクリエイティブを制作することが重要です。 具体的には、短い動画や高品質な画像、インフォグラフィック(情報を視覚的・直感的に分かりやすく伝える方法)、ユーザー生成コンテンツ(UGC)などを活用し、広告を見たくなるような魅力的なコンテンツを提供します。

広告を常に最適化する

SNS広告の効果を最大化するためには、広告を常に最適化することが大切です。

広告のパフォーマンスを定期的にチェックし、クリック率やコンバージョン率が低い場合は、クリエイティブやターゲティング設定を見直します。A/Bテストを実施して、どの要素が最も効果的であるかを確認することも重要です。

例えば、異なる画像やコピーを使って複数の広告を試し、その結果を比較して最適なバージョンを選定します。このプロセスを繰り返すことで、広告の効果を継続的に改善できます

効果測定と改善をする

SNS広告の運用において、効果測定と改善のプロセス(PDCAサイクル)は欠かせません。まず、広告キャンペーンの成果を測定し、クリック率(CTR)、コンバージョン率(CVR)、費用対効果(ROI)などの指標を分析します。

その後、得られたデータを基に広告のパフォーマンスを評価し、必要な改善点を特定します。次に、改善策を実施し、再度効果を測定します。このサイクルを繰り返すことで、広告の精度と効果を高め、最適な広告運用が可能となります。 PDCAサイクルを取り入れることで、長期的な広告効果の向上が期待できます。

SNS広告の注意点

SNS広告をする上で気をつけなければならない点があります。以下に3つ紹介します。

  • 自社商品やサービスに合うSNSを選択する
  • 予算に合わせて選択する
  • 炎上リスクを未然に防ぐ

自社商品やサービスに合うSNSを選択する

SNS広告の効果を最大化するためには、自社商品やサービスに最も適したSNSプラットフォームを選択することが重要です。

例えば、若年層をターゲットにする場合はTikTokやInstagramが適していますが、ビジネス層を狙う場合はFacebookのほうが効果的でしょう。もちろん、広告宣伝する商材のジャンルや特性にもよるので、媒体利用者の年齢層だけで判断することは適切ではありませんが、市場分析に基づいて最適なSNSプラットフォームを選ぶことは非常に重要です。

それぞれのSNSのユーザー層や特徴を理解し、自社のマーケティング目標に最適なプラットフォームを選ぶことで、広告効果を高めることができます。

予算に合わせて選択する

SNS広告を運用する際には、予算に合わせた広告プランを選択することが重要です。

各SNSプラットフォームは異なる課金モデルや広告形式を提供しており、少額から始められるものも多く存在します。 限られた予算で最大の効果を得るために、コストパフォーマンスの良いプラットフォームを選び、費用対効果を常にチェックしながら広告運用を最適化していくことが必要です。

炎上リスクを未然に防ぐ

SNS広告は拡散力が高い反面、炎上リスクも伴います。

広告の内容や表現には細心の注意を払い、ユーザーの感情を逆なでするようなコンテンツは避けるべきです。 特に、差別的な表現や政治的なメッセージには注意が必要です。

事前に複数の視点からコンテンツをチェックし、リスクを最小限に抑える対策を講じることで、ブランドイメージを保護し、安心して広告運用を行うことができます。

SNS広告は自社の商品やサービスに合ったものを選ぼう

SNS広告について、他の広告との違いやメリット、6つのSNS広告の種類と費用について解説してきました。

SNS広告は潜在層にリーチすることができ、ターゲティングの精度が高いところに大きなメリットがあります。 SNS広告を効果的に運用していくためには、広告を掲載する目的を決めて、ターゲティングを細かく設定する必要があります。

また、広告を作成していく中で最適化をして常にユーザーの行動を数値化して追うことも大切です。 自社の商品やサービスの特徴に合わせたSNSを選び、顧客に響く効果的な広告を作りましょう。